
2004年11月2日から5日にかけて訪ねた台北の旅行メモです。台湾の漢字は繁体字ですが、ここでは日本で一般的な書体に変えています。
キャセイ航空451便で成田から台北へ。
座席のビデオで「スパイダーマン2」を観る。メイおばさんを助けるためにオクトパスと戦う場面は、何回観てもいい。英語音声、中国語字幕なので、音声に集中。ダイアログの良さをあらためて認識する。Kirsten
Dunstの声の演技もすばらしい。Toby McGuireの低いボソボソしたしゃべりは聞き取りずらいが、これは役作りのせいもあるのだろう。
ほぼ定刻どおりに到着。入国手続きはスムーズ。
当座の台湾元を買いに空港内の両替所を訪ねると、為替レート一覧になぜか南アフリカ・ランドが。あとで調べたところ、台湾と南アフリカは最近(1998年)まで密接な関係を持っていたという。台湾からの移民は万以上に及んだのだとか。なるほど。
午後8時30分ごろ、市西部、西門地区の「一楽園大飯店」へ到着する。やや古いホテルで快適さはいまひとつだが、交通アクセスはたいへんいい。客層は日本人と大陸の中国人が主。
ホテルから歩ける範囲に「華西街観光夜市」という夜市があるので、夕食はそこでとることにする。西寧南路を南下し、和平西路を経由して広州街を西へ。
途中、広州街の北側にマンガ専門の貸本屋があったので覗いてみる。店内は4坪ほど。マンガで埋まった3段引戸式の本棚が壁際に連なっている。中央にソファーがあり、中学生ぐらいの子が数人、熱心に本を読んでいた。
品ぞろえは日本マンガ中文版7割、台湾マンガ2割、日本マンガと香港マンガがそれぞれ若干、といったところ。アメコミは麻宮バットマンのみ。一般的なマンガ読者はアメコミを読まないのだろう。
広州街を進み、龍山寺というお寺のそばへ。門前の通りにいくつもの屋台が並んでいる。この界隈は以前色街だったところで、いわゆる“精のつくもの”のお店が多い。大蛇の背中の上で、そのエサとなる運命のひよこが眠っている。SARS禍の記憶がなまなましいいま、さすがにハクビシンは(少なくとも表通りには)いない。
華西街観光夜市は屋台ではなく常設店舗の連なり。比較的に清潔そうな海鮮料理屋を選び、店員と注文について話をしていると、ザルから飛び出して地面へ落ちたエビを、ひょいとつまみ上げて洗いもせずに戻した。おいおい。そのエビの蒸し物とガチョウの蒸し物、ブタの血を固めたものの炒め物、ナマコの炒め物、豆苗の炒め物をいただく。ビールを1本つけて、ふたりで1300元(約4000円)ほど。
夜の気温は20度ほど。われわれには薄手のシャツでちょうどいい感じだが、地元客はたいてい上着を身につけている。なかには首にマフラーを巻いている人も。あとで聞いたところ、昼夜で温度差があるこの季節は、彼らにとってカゼのシーズンなのだそうだ。
夕食後、華西街周辺の屋台をひやかす。ガンシューティングをおとなたちが真剣にプレイしていた。お店の人にはだいたい英語が通じる。簡単な日本語を使える人も多い。夜食に胡椒餅という焼きまんじゅうの一種をいただく。美味。
ホテルへ戻る途中、コンビニでお茶を買う。PCのオンラインゲームソフトが数百元で売られていた。海賊版との競争があるためだろうが、安い。
ちなみにレジ袋は別料金。セブンイレブンを除いて、こちらから求めないかぎり渡そうとしないようだ。
ホテルの朝食はイマイチ。次から外で食べることにする。まあ、こういうものは一度試してみないとわからない。
台北のお店の開店時間はおおむね午前11時。午前中は何をしようかとガイドブックをめくると、誠品書店という大手書店チェーンの24時間営業の店舗が載っていた。
西門站(駅)からMRTに乗り、市東部の忠孝敦化站で下車して敦化南路を南下。お目当ての「誠品敦南店」(台北市敦化南路一段245号 TEL:02-2775-5977)は、通りに面した中規模ビジネスビルの2階全体。落ち着いた雰囲気のいい書店だ。
マンガは本棚5つ、平台1つとなかなかの扱い。品ぞろえは日本マンガ7割、台湾マンガ2割、欧米マンガ1割という感じ(日本マンガと欧米マンガは輸入書と中文版を合計)。
欧米マンガ中文版には「タンタン」「ピーナッツ」「カルビン&ホッブス」、Enki Bilalのニコポル3部作、Neil Gaimanの童話などがあった。翻訳の質までは判断できないが、造本設計はかなり良好。とくにNeil Gaiman「The Day I Swapped My Dad for Two Goldfish」台湾版は、製版から製本まで手抜きなしに作られている。最近の邦訳アメコミよりよほど高レベルだ。
輸入書はゴールデンエイジの解説書、Daniel Clowesなど。日本の洋書店と異なり通常の為替レートに沿った価格設定がなされているため、相対的に安く感じる。
翻訳も輸入書もすでに評価の定まっているものばかりで、メインストリームにせよオルタネイティヴにせよ、現在のアメコミシーンの最前線といえるものが皆無なのは気になるところ。James Jean、Jo Chenといったアメコミで活躍している台湾人の作品もまったくない。まあ、この件に関してはわれわれ日本人も偉そうなことはいえないのだが。
「高塔上的人 欧美漫画名家介紹」(著/張清龍、商周出版、2004年)という書籍を購入。サブタイトルどおり、欧米の著名アーティストを紹介したもの。こういう紹介の切り口は日本でもありではないだろうか。それぞれのアーティストにつけられたコピーがおもしろいので、引用しよう。
奇幻芸術的先駆者 Frank Frazetta
写実考究的極至実践者 Geof Darrow
漫画界的商業鬼才 Todd McFarlane
義(伊)大利的情色漫画大師 Milo Manara
写実与誇張的絶妙融合 Richard Coben
東方之星 Jim Lee
舞動光影的魔術師 Mike Mignola
挑戦極限的法(仏)国漫画大師 Moebius
地下漫画之王 Robert Crumb
主流漫画中的最佳芸術表現者 Frank Miller
厭抑沈重的末世風情 Enki Bilal
反斗怪傑 Jamie Hewlett
重造超人国度 Alex Ross
搖滾風格重量出撃 Simon Bisley
台湾マンガもいくつか読んだが、絵のレベルは高いものの、全体的におとなしく物足りない。
絵本コーナーで幾米という人気作家の「地下鉄」(大塊文化、2001年)を購入。地下鉄の喧騒を通じてさまざまな世界を想像する盲目の少女のお話。これも僕の嗜好からするとだいぶ甘いのだが……。
雑誌コーナーを見ていたら「ビリー&マンディ」が描かれた表紙に目が止まる。どうやら、幼児向けの英会話入門誌らしい。“カートゥーンを観て英語を身につけよう”というわけで、キャラクター紹介やその月に放映されるエピソードのあらすじが載っているようだ。
そうこうしているうちにお昼が近づいてきたので、タクシーに乗り信義路の「鼎泰豊」へ。東京観光で米久へ行くようなものだが、こういうことも体験しないと。各種小籠包をいただき、ふたりで5000円。今回の旅行でもっともぜいたくな食事となる。
昼食後、信義路を西へ。途中、中正紀念堂のサイズにあきれる。
東門から市の中心部へ入り、城中市場や重慶南路の書店街を探索。スターバックスで休憩。今回の台北訪問の目的のひとつに、FScが台湾スターバックスのために制作したという絵本の入手があったのだが、ここを含めて数軒探したものの、影も形もなかった。とはいえ、これはなかば予想どおり。ドリンクの量はアメリカに近く、同サイズでも日本よりだんぜん多い。
いったんホテルへ戻り、しばらくうたた寝。
夕方から活動再開。ホテルに近い西門町を歩く。まずオタクビルとして有名な「萬年商業大楼」を見学するが、報告すべきことはとくになし。日本の軍事雑誌の充実ぶりが笑えたぐらい。ついで「誠品商場」の「誠品西門店」へ。ここでアメコミのリーフを初めて見る。DCのBatman、Superman系レギュラータイトルがそろっていた。Marvelタイトルはなぜないのだろう? 過去に何かトラブルでもあったのだろうか?
ふたたび市の中心部へ。午後6時ごろ予備校が集まる南陽街へ差しかかると、一日の勉強を終えた若者たちでごった返していた。
帰宅ラッシュ時の台北の路上はスクーターで波乗りができそうな状態。人口2400万人の台湾に1600万台のスクーターがあるというからすごい。台北市内はおおむね平坦なのだから自転車で十分なのではと尋ねると、“われわれは中国人(=貧乏人)ではない”とのこと。自転車大好きなオランダ人が聞いたら怒るだろうな。
彼らの運転マナーはまあまあ。東南アジアのような4人乗り、5人乗りは見かけなかった。ただし、交通信号の変わりぎわを無視する人が多いので、歩行者用信号が青になっても左右を見て安全を確認してから渡るほうが無難。それから、歩道の車道側半分は事実上スクーター駐輪場。交差点の車いす用スロープはスクーターの昇降口と化しているので、信号待ちの間、そこに立たないほうがいい。
ちなみに歩行者用信号の青はドット絵のアニメーションになっていて、通常は歩きモーション、残り時間が少なくなると小走りモーションが表示される。世紀の発明、青色発光ダイオードをこういうことに使うとは(笑)。
カフェで休憩したあと、 台北車站からMRTに乗り市北部の剣潭站へ。台北最大の夜市、「士林観光夜市」へ行く。
駅を出て文林路を少し北上すると、左手に常設の食堂屋台街がある。その前を通りすぎて大東路に入ると路上に装飾品などの屋台が出ており、さらに奥へ進むと食堂屋台が並ぶ通りに出る。
さて、夕食をどうしようと探していたら、地元客でにぎわうデリカを発見。勝手がつかめないので、しばらく様子をながめる。どうやら、紙皿に好きなおかずを盛り、最後にご飯をよそってもらって料金を支払えばいいらしい。
その料金だが、なんとふたりで130元(約400円)。うわあ。申し訳ないぐらいの安さだ。一日200食、粗利50%として、4万円だよ。間違いじゃないの?
MRTで西門へ戻り、「台北牛乳大王」というジューススタンド・チェーンで飲み物を買ってホテルへ。
TVのトップニュースは米国大統領選挙速報。ブッシュ有利を伝えている。4年前のこの時期にオランダにいて、ブッシュとゴアのどちらが勝ったのかちっともわからず、いらいらしたことを思い出した。
ホテル近くの屋台で朝食。おかゆにおかず少々をつけて、ふたりで130元(約400円)。
午前中は誠品敦南店で時間をつぶすことにする。MRTに乗っている間、駅名表示と車内アナウンスを照らし合わせていて、「Ch」と「Zh」を聞き分けられないことに気づく。あとで調べたところ、中国語には有気音、無気音という発音の区別があるらしい。中文を読むのはたぶんそれほど難しくないだろうが、会話を身につけるのはたいへんかもしれない。
書店を細かく観察するとなかなかおもしろい。海外旅行の棚を見ると、なぜかスペインが人気。雑貨コーナーにかつての海賊版書籍をあしらった絵葉書が。こういうものが、すでに懐古の対象になっているのだ(もっとも、服飾品とソフトウエアはまだまだ違法コピーばかりだが)。タロット占いがブームになっているようで、さまざまなオリジナルカードが出ていた。
敦化南路を少し下ったところにある「京兆尹」という北京料理店で早めの昼食。精進料理をいただく。ふたりで1000元(約3000円)ほど。このお店の名物のひとつにフルーツデザートがあるのだが、あいにくマンゴーはシーズンオフだった。台湾の食を満喫するためには、夏に訪ねるほうがいいのかもしれない。
敦化南路をさらに南下し、新義路を西へ。金山南路との交差点を左折し、新義路の裏通りに入る。目的地は台湾唯一の“欧美(米)漫画専門店”、「Banana」(台北市信義路二段86巷6号1楼 TEL:02-2393-1360)だ。
店内の広さは6坪ほど。入口から見て右側と正面が本、左側が玩具類。コミックショップ独特の雑然とした雰囲気に思わず嬉しくなる。
本の品ぞろえはDCが8割、Marvelが1割、そのほかが1割といったところ。なぜかここでもMarvelは少ない。店頭在庫をチェックすると、Batman、Supermanといったメジャータイトルはそれなりに売れているようで、めぼしいものは残っていない。VertigoやDCグループに加わったあとのWildStormのタイトルが充実していた。コレクションの欠けや日本ではほとんど入手できないCaliberタイトルを探し出し、ホクホク。リーフの価格は1冊150〜180元(500円前後)。アメコミ好きで台北を訪れる機会があれば、足を運ぶ価値は十分にあるといえる。
しかし、なぜバナナという店名なのだろう。“身体はアジア人でも心は欧米人”という意味だとしたら、あまりいい言葉ではないと思うのだが。あいにく経営者がすぐに出かけてしまい、話を聞けなかったのは残念。ちなみに、スクーターあふれる台北で、彼は高級自転車に乗っていた。一種のへそ曲がりなのかも(失礼!)。
昨日同様、東門から市の中心部へ入る。「Latte Coffee」というシアトル・カフェ風の店(台湾ローカル?)で休憩。おみやげのお茶やお菓子を買い、いったんホテルへ戻る。
西門町の屋台で夕食。ちまきと魚団子のスープをいただき、ふたりで155元(約500円)。
地元のデパート、遼東百貨店を覗く。玩具は日本製が多い。食品売場でメキシコフェアを開催していたが、なぜかお菓子ばかり。台湾人はエスニック料理にはあまり関心がないのだろうか?
最後に「饒河街観光夜市」へ。台北站から台湾鉄道に乗り、市東部の松山站へ向かう。饒河街は駅前の八徳路を渡ってすぐのところ。
お寺の近くに台湾の右翼の車がとまっていた。迷彩塗装を施した中型のバンで、屋根の上に模擬砲塔がついている。治にいて乱を忘れずというわけか。南海に取り残された日本軍の守備隊のようでもある。
夜市はおおむね一本道。食品、服飾品のほか、エステ、ネイルアートなどさまざまな屋台がある。今回見物した3つの夜市のなかでは、いちばんパチものが豊富。なかでも「太鼓の達人」には大笑い。学芸会の大道具のような手塗りの筐体の上に、家庭用のモニターが乗っている。本物の太鼓のようなタタコンが、かえっていかがわしさを醸し出していた。キャラクターはキティ、ディズニー、トムとジェリーが中心。ポケモン、パワーパフガールズといった新顔は少ない。たぶん人気がないわけではなく、パチものの作り手が古いのだろう。
愛玉、刻みゴマをまぶしたお餅、菓子パンを買う。どれもおいしい。
基隆路をMRTの市政府站まで歩き、ホテルへ戻る。いま思えば、タクシーで「臨江街夜市」をはしごしてもよかった。
TVのトップニュースは陳総統の当選無効を訴える裁判のてんまつとアラファトの病状悪化。つまり、たいした出来事はないと。
城中市場近くのビーフン屋台で朝食。ふたりで60元(約180円)。城中市場のジュース屋でオレンジジュースを注文。9個のみかんをその場で絞り、1杯50元(約150円)。
台北には角々にロト売場がある。5期続けて的中者がなかったそうで、この日には賞金が15億元(約45億円)に跳ね上がっていた。1から40までの数字を8つ当てるという仕組みなので、確立は約6兆5000億分の1。あれから、誰か当てたのだろうか。
キャセイ航空450便で台北から成田へ。帰りのビデオは「エイリアンVSプレデター」。シリアスだった本編からかけ離れた、とぼけた展開に大笑い。
とまあ、駆け足で巡った4日間(実質2日半)でした。見聞きできたのは台北のほんの一部分にすぎず、漫画便利屋へ行けなかったのも残念ですが、いつか次の機会もあることでしょう。台北の人々はとても親切で、不愉快な思いはほとんどしなかったことも付け加えておきます。
(更新:2004.11.7)