

スパイダーマンのおもしろさのひとつに、ピーターと悪人たちの隔たりの少なさがあると思います。シリーズに登場する悪人たちの多くは何らかのアクシデントにより特殊能力を身につけた人間で、この点ではピーターと何ら変わりありません。彼らをヒーローとヴィランへ分けたのは、ほんのささいなものだったりします。このような微妙な関係にあるからこそ、僕たちはピーターと悪人たちとのやりとりにハラハラし、正しい行いを貫こうとする彼に喝采を送りたくなるのではないでしょうか。
さて、今回のお話では、ミステリオという古くからいる悪役が登場します。ミステリオことクエンティン・ベックは服役を終え更正しようと努力していますが、犯罪歴のある彼にはだれも仕事を回してくれません。一方、主人公のピーターはいまだにメイ叔母さんから子ども扱いされており、友だちもできず、孤立感を深めています。そんな彼らは、偶然のことから映画『キングコング』を一緒に観ることになります。めくりめくファンタジーの世界に陶酔する2人。映画館を出たあと、彼らはまるで申しあわせたように奇妙な衣装をまとうのでした。1人はヒーロー、スパイダーマンのコスチューム、そしてもう1人はヴィラン、ミステリオのコスチュームを……。
このあと、ストーリーは快調に展開して行きます。スパイディとミステリオの戦いがインフレ気味に拡大していくようすは、ずっと続いてほしいと願いたくなるほどです。そして迎える、ほろ苦い結末。ラストでピーターが行う長い独白にはさまざまな解釈ができますが、僕としては素直に受け止めたいと思っています。
おすすめ度
★★★★(4/5)
ピーター・パーカー/スパイダーマン
大学生になったばかり。スパイダーマンとして日夜奮闘しているものの、マスコミの激しいバッシングのため、世間の風当たりは冷たい。私生活ではベティ・ブラントという女性との交際に終止符を打ったところ。大学のクラスメイトと打ち解けることもできず、だれひとり理解者のいない状態。
ジョー・スミス
映画のスタントマン。撮影中の事故をきっかけに怪力を発揮するようになった。以前スパイダーマンと戦っているが、悪人ではない。SF映画に主演するチャンスをつかもうとしている。
クエンティン・ベック/ミステリオ
元映画のSFXマンで、特殊効果を応用した犯罪を得意とする。かつてJ.ジョナ・ジェイムソンと結託してスパイダーマンを陥れようとして失敗、服役した。この物語の開始時点では真人間になろうと考えているが、職はおろか住む家さえない。
J.ジョナ・ジェイムソン
有力紙デイリー・ビューグルを主宰するジャーナリスト。スパイダーマンバッシングの張本人にして、ピーター・パーカーの雇い主でもある。今回、ひどい目に遭う人。
スクリプト
John Marc DeMatteis[ジョン・マーク・デマティス]
ペンシル/インク
Michael Zulli[マイケル・ズッリ]
#1には別カバー2つ(1つはJohn Romita[ジョン・ロミータ])、#2には別カバー1つ(Steve Rude[スティーヴ・ルード])あり。